Chikumoのポタオデ日記

個人的な感想などをつらつらと書き連ねるブログです。

【レビュー】Fiio M11Pro 

~そつなくこなす優等生DAP

 

 

 

 

今回は視聴するのに使用するDAPのM11proをレビューしていきたいと思います。

 

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 https://www.fiio.jp/products/m11pro/

八万円台のDAPとして考えてもかなりデザインがよく、所有感を刺激するデザインではないかなと思います。

主な特長

  • 旭化成エレクトロニクス製フラッグシップ2ch DACチップ「AK4497EQ」を2基、左右独立構成で搭載。さらなる低ノイズ・低歪と高出力を両立
  • 32bit/384kHzまでのPCMデータの再生に対応するほか、DSD256のDSDデータのネイティブ再生に対応
  • 独立した2系統の水晶発振器を搭載し低ジッターを実現する新クロックシステム
  • THXの特許技術AAA-78回路をフルバランス構成で搭載したヘッドホンアンプ部
  • 音量の左右不均等を解決するADCボリュームコントロール機能
  • 最新の音楽フォーマット「MQA」のフルデコード機能を搭載
  • もうケーブル選びで迷わない。3.5mmシングルエンド出力端子と2.5mm/4.4mmバランス出力端子を搭載
  • SoCにSamsung「Exynos 7872」を採用。デジタルオーディオプレーヤー史上最高クラスの高速動作を実現
  • BTレシーバー/BTトランスミッターとしても利用可能な先進の高性能Bluetooth送受信機能
  • apt X/apt X HD/LDAC/HWA(LHDC)といった主要高音質ワイヤレスオーディオコーデックに対応
  • 2.4GHz/5GHz帯のデュアルバンドWi-Fi接続に対応
  • 自社開発アプリ「FiiO Music」を搭載するカスタマイズドAndroid OSを搭載
  • スマートフォンからの本体操作を可能にする「FiiO Link」対応
  • AirPlayやDLNAなど、ネットワーク経由での高音質再生に対応
  • 32bit/384kHzまでのUSB DAC機能に対応したUSB Type-C端子
  • USBオーディオ出力(~32bit/384kHz、~DSD256対応)に対応
  • ライン出力&S/PDIFデジタル出力対応の多機能ヘッドホン出力端子
  • リアルタイムDSD変換やダイナミックEQなど、M11をユーザーの好みに最適化する様々な信号処理機能を搭載
  • 64GB内蔵ストレージ&2TB対応マイクロSDカードスロット搭載
  • デジタルオーディオプレーヤー史上最大クラスの圧倒的大画面。5.15インチの18:9 型HDタッチスクリーンを採用
  • 連続再生時間9.5時間、待機時間最大55日間というロング・ライフ動作を実現するほか、急速充電にも対応

M11とM11Proの相違点

  M11 M11Pro
DAC AK4493EQ×2 AK4497EQ×2
マスタークロック 1系統 2系統
アンプ回路 FiiOオリジナル THX AAA-78
ボリューム回路 デジタルボリューム アナログボリューム(ADC)
内蔵メモリー 32GB 64GB
マイクロSDカードスロット 2基 1基
サイズ 70.5mm*130mm*15.5mm 70.5mm*130mm*16.5mm
重量 約211g 約232g
バッテリー容量 3800mAh 4370mAh
ディープスリープ 50日 55日
連続再生時間(3.5mm) 13時間 9.5時間
連続再生時間(2.5mm/4.4mm) 9時間 8.5時間

https://www.fiio.jp/products/m11pro/

先んじてメーカーの説明を引用させていただきました。私はあまりアンプ回路がこれだとこんな感じの音やDACがこれだからこういった感じの音という知識がないため、この表はそういった知識のある人や、DACメーカーの好みがある人用として載せておきます。

 

1.なぜ購入したか

 購入に至るまでの経緯

 M11proを購入するまで、SONYのWM1Aを使用してきました。音は申し分なく良いのですが、出力が弱いことが原因でダイナミックドライバーを搭載したイヤホンの能力を十分に発揮させることができていないと感じてしまうことが多々生じました。

 また、やはりDAPを二つぐらい使用して使いまわしている方を見ると、手持ちで飽きないようにサイクルを組むことができると考えました。

 

 なぜM11proにしたのか

 ほかに候補としては、同じFiioのM15やAstell&Kernの新作のKANN ALPHAも候補として挙げていました。購入段階の試聴時に新たに購入するものに関してのポイントを作成してすべてクリアできる、もしくは七・八割クリアできたうえで音質的にも求めていたものであるといった形で検討しました。

 大まかに挙げてしまうと、

・リスニング寄りではない

・過度な味付けがなく、イヤホンの音を重視している

・出力があり、アンバランス端子でもヘッドホンをある程度鳴らすことが可能である

・寒色系の音色である

・UIが使用しやすい

といったものです。

 試聴に使用したイヤホンはES60(昔から所有しておりますが、見た目で持ち主がばれそうな気がしたため公開しておりませんでした)、ONKYO IE-C2(ワルキューレモデル)+final シルバーコートケーブルです。ES60は今後レビューを挙げる予定ですが、簡単にいうなればステージモニターとしてかなり優秀なCIEMで、音質は暖色系でありながら上から下までしっかりと聴くことができるイヤホンです。IE-C2も今後レビューを上げますが簡単に紹介させていただくと、こちらは出力がかなり必要となるイヤホンではありますが、しっかりとイヤホンの能力を発揮させると中規模ホールで聞いているかのような感覚が味わえるイヤホンです。

 M11proは他の二つよりもモニター気質であり、寒色系の音色でイヤホンの音を重視した音作りであったと思います。ヘッドホンを鳴らす出力に関しては他の二つのほうがあったと思いますが、購入条件の二つ目にM11proが該当したためこちらを購入しました。

 

2.使用感

 UIについて

  私自身音楽が聴ければいいやという人ではあるためUIを重視しない人ではありましたが、いろいろなDAPを触っていくうちに感覚的にこうすればこうなるという「操作方法」を覚えなくても簡単に使用できるものから、少し癖がありこのボタンを押さないと戻らない、音楽再生にも一苦労というものもあることを知りました。

 CDを入れて再生ボタンを押せば音楽が流れる、レコードに針を落とせば音楽が流れる。一昔前のほうが簡単に思えるほど今のDAPは操作のしやすさしにくさに違いが出てきたと思います。

 国産贔屓をするわけではないですが、UIにおいてSONYDAPを超えるものはいないのではないかと思うぐらいにはWalkmanは使用しやすいものです。それを追い越そうと多くのメーカーが独自の考えをUI作製に込めていると感じています。

 海外メーカーのUIで使用しやすいと実感できるのはやはりAstell&KernのDAPではないかと思います。現在5世代目・6世代目?になるハイエンドシリーズを筆頭にポータブルオーディオ界隈の超ハイエンドメーカーとして君臨していますが、音とともに操作感がよく、選曲もかなり楽であると実感しています。

 肝心のFiio M11proのUIはというと標準ぐらいではないかと思います。Androidベースであるため特筆していいと思うところはなく、かといってここが悪いと思うところはないなという可もなく不可もなくといった印象です。

 

 Fiio Music

 Fiioの純正音楽再生アプリです。Pure musicモードにするとこのアプリのみの使用となります。

 

 ホーム画面

 直近のアップデートで大幅に変わり、ホーム画面が結構にぎやかになりました。(良い方向にです)

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最新版のホーム画面

 趣味がわかってしまう状態になります。(恥ずかしい;;)新しいホーム画面は検索窓・再生中のプレイリストまたはアルバムの曲(左右に動かすと前の曲、後ろの曲に動かすことができます)・プレイリスト・端末内の音楽・DLNA・そして下に最近再生した曲/よく再生する曲/最近追加した項目とわかりやすくなったと思います。よく再生する曲に関してはipodユーザーだった私としてはかなりうれしい機能です。ipodは曲取り込みでパソコンに接続すると再生回数上位25曲が入ったプレイリストを作成してくれます。いつも聞く曲は自然とこういったプレイリストに入るため、とりあえずどれ選ぶか悩んだ時の救世主となります。

 

 再生画面

 

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デフォルトと新しい再生画面

  左がデフォルトの再生画面、右が新しく選択できるようになった再生画面です。新しいものは下にスペクトラムなど選択できるようになりました。個人的な感想ですが、好きなアルバムアートワークが大きな画面で見れるのは一つのメリットですが、両端が切れてしまっているため、そこが残念だったなと思っています。また、ファイル形式はデフォルトのみ見れる状態ですので、いろんな形式で保存されている方は確認するのが一苦労かもしれないです。(私は同軸接続する可能性も加味してM11proに入れる曲はすべてFLACの24bit192kHzです)

 また、新しい再生画面はプログレスバーを非表示にすることが可能となるため、アルバムアートワークを楽しみたい人にとっては一つのメリットかもしれないと思います。

 

 Bluetoothを使用し、スマホをM11proのリモコンとして使用することができる機能です。接続してしまうと、一切M11proに触らなくても曲選択することができる優れものです。A&KにもAK Connectがあったように、今は何でもスマホがあれば何でも解決!という状態で、曲選択はスマホで再生はDAPからということも可能になりました。

 いいことだらけに感じるFiio Linkですが、アーティスト検索でアルバムの頭から・・・と思いアーティストを選択すると保存してある曲名がずらーっと出てきてしまいます。普通だとアーティスト→アルバム名→曲名(1から順に)ですが、Fiio Linkを使用すると、アーティスト→曲名(順不同)となってしまいます。アルバムで選ぶ方法もあるためそちらを使用すればいいかもしれませんが、こちらはこちらでアルバムアートワークが出てこないです。

 そのためFiio Linkを使用する際はアルバム名を記憶しておくか、大抵聴きたくなるとわかっている曲はプレイリストを作成して保存しておくとよいかもしれません。

 

3.音質

 最初に試聴用として使用する機器をレビューとして書く際に、どちらを先に書くべきか悩みました。卵が先か鶏が先かの状態なのです。試聴用イヤホンとして使用しているMH334を紹介しても、試聴用DAPがM11proだけですのでDAPが要因の音なのではといわれてしまえば否定ができませんしその逆もしかりです。

 そのため、今回の試聴用DAPであるM11proのレビューにはMH334のほかにES60も用いてレビューを書かせていただこうと思います。

 

 3.5mmシングルエンド

 イヤホンの性能をそのまま表しているといっていい再生能力であると思います。MH334はよく言われるボーカルが近いといわれていますが、その通りに再生しながらもステージモニターとして必要なリズムの取りやすい低音をいじらずにそのまま再生しています。(少し低音がこもって聴こえるのはMH334のアンバランス接続のだからだと思ってます)また解像度は高く、東京オータムセッションでの評価は4.5です。

 ES60にするとこちらもES60の全帯域で過不足のない量感が出ていながらも高解像度を保っており、オータムセッション評価は変わらず4.5です。

 試聴に用いているイヤホンがどちらも日本・世界で多く用いられているステージモニターのため解像度は高いですが、DAPによっては味付けされてしまい変に低音が強いなどといった違和感を覚えることがありますが、M11proに関しては

「イヤホンの音をそのまま味わえるDAP

であると感じました。

 

 4.4mm5極バランス接続

 バランス接続は2.5mmと4.4mmの二系統が用意されていますが、手持ちの関係上4.4mmのみの試聴となります。A&Kが2.5mmバランスを作成し長い間バランス接続の主流として使用されてきましたが、最近ではSONYが開発した4.4mmが多用されるようになってきています。多くのメーカーが4.4mmに乗り換え始め、A&Kでも最新機種は4.4mmを搭載するまでになってきています。

 M11proはそんなバランス接続の変化を象徴しているような形のDAPで、2.5mmも4.4mmも標準装備であることは大きなメリットであると思います。もともと2.5mmを使用されていた方でもそのまま2.5mmを使用することができ、なおかつ4.4mmに興味がわけば4.4mmも同時に使用することができるというメリットがあります。

 前置きが長くなってしまいましたが、バランス接続の音質についてお話しようかと思います。3.5mmと基本的に変わらず、イヤホンの音そのままですがより明瞭感が増しハキハキした音に変化します。3.5mmでは少し低音がこもって聴こえるMH334でも4.4mmにするとこもり具合が消え、しっかりとなる低音は鳴らすが必要以上は鳴らさない、よりリズムを正確に提供するDAPとなったと感じます。少しリズムが早い曲でももたつかずに再生することができるようになったのはバランス接続の恩恵であると実感できます。東京オータムセッションでの評価は5で、しっかりとラジオノイズとそれ以外を緻密に表現し高い解像度を持っていると実感できます。

 ES60はNull AudioのLuneの4.4mmを使用して試聴いたしました。ES60は完全なフラットではないですが、モニターする上で必要なすべての帯域をかけることなくしっかりと再生する能力を持っています。M11proのバランス接続で試聴したところ、何がどのくらいの距離で演奏されているかわかるぐらいに分離感がしっかりとしました。また低音が芯を持ち、しっかりとリズムに乗りやすくなりました。東京オータムセッションでの評価もMH334と変わらず5としっかりとラジオノイズを分離して表現していました。

 M11proの4.4mmで接続すると

「イヤホンの性能をより強化した明瞭な音」

に変化すると実感しました。

 

 DSD変換モード

 M11proにはPCM信号をハードウェアでDSDに変換して再生するDSD変換モードがあります。使用しようとすると注意が出てきて消費電力と発熱量が増え、再生時間が減るが使用するかと聞いてきます。詳しいことはわかりませんが、M11pro内でよりデータ量の多いDSDに変換してからDAC、アンプを通って再生されるため、普段以上に経路が増えるために消費電力と発熱量が増えるのだと考えました。

 聴いてみての感想ですが、多少中低域のふくよかさが増え、暖色感のある温かみと厚みのある音に変化したと感じます。低域の音の厚みが通常より増え、より柔らかく支える低音となりました。音場もかなり広がったような印象を受け、今までイヤホンの音をそのまま出すことに注力していたはずのM11proが、イヤホンの音をそのまま出しながらもより情熱的に、聞き手を感動させる大きな変化をします。

 私もDSD変換モードにしたところでそう大きくは変わらないだろうとたかをくくっていましたが、東京オータムセッションを一曲目に聴いたとたん大きな変化に驚きました。今まで東京オータムセッションの最初は解像度の評価に使用するぐらい、しっかりと再生するのが難しいと思っていましたが、DSD変換モードを使用したところ評価するのがおこがましいほどに滑らかにふくよかに再生されました。

 このDSD変換モードがどれだけ本物のDSDに近いかはわかりませんが、普段のサンプリングレートでは少し粗さを感じられる曲に使用していただくと大きく変化すると思います。

 DSD変換モードは

「より滑らかで柔らかく豊かな音に変化する」

+αでありながら多用したいモードでした。

 

4.総評

 なぜ8万5千円で買えるのだろうか?と疑問を持ってしまうほど多機能でありながら、音もハイエンド機と張り合えるほどの原音再生能力を有しています。現状ハイエンド機を持っていない方で、ステップアップとして10万円前後のモデルを検討しているのであれば検討していただきたい機種であることは間違いないです。コストパフォーマンスという言葉で表したくないのですが、購入に出した価格以上のリターンが見込める機種であることは間違いないです。

 音質も3.5mmはイヤホンの音をそのまま味わえ、4.4mmではイヤホンの音を強化したより明瞭な音に、DSD変換モードを使用するとより滑らかで柔らかく豊かな音になるという三段変化を行えるDAPです。

 初めてのレビュー記事でつたない表現などあったと思います。もっとこうした方がいいなどありましたら教えていただけると嬉しいです。